相続法改正について研修をうけてきたので、備忘録2
自筆証書遺言の方式緩和 施行済み
2019.7.1~
遺産分割前の借払い制度 (2019.6.30以前の相続も7.1以降なら仮払い可)
遺産分割における配偶者保護遺言執行者の権限明確化
遺留分関する権利行使の効果見直し
遺留分減殺の対象となる生前贈与の見直し
受遺者等に対する期限の許与制度創設
2020.4.1~
配偶者居住権の創設
2020.7.10~
自筆証書遺言の保管制度実施
配偶者居住権について
遺産分割又は遺贈により、生存配偶者の終身(期限の定めをした場合はその定めによる)の間、無償で使用できる。
つまり、所有権と居住権をわけて遺産分割或いは遺贈の対象とすることができる。
ということは、所有権と居住権をわけて取得するような遺産分割を行った場合、配偶者の死亡とともに居住権が消滅するわけで、居住権消滅後は居住権がなく使用収益もできる所有権のみとなる。
現行法だと、たとえば生存配偶者が居住するために配偶者が自宅の所有権を相続して、配偶者死亡後あらためて配偶者の相続人間で遺産分割協議を行って、自宅所有権を誰が取得するか決めていたが、改正後は最初の相続の段階で所有権を誰が取得するか決めておいて、生存配偶者には居住権を取得してもらうことにより、配偶者死亡後の自宅の所有権についての相続手続や遺産分割が不要になると思われる。
また、先祖代々の自宅を承継してきた夫とその配偶者間に子がなかった場合、先祖代々の自宅の所有権は夫の兄弟姉妹が取得し配偶者は居住権を取得することにより、先祖代々の資産流出を防ぐことができそうだ。
裁判外の仮払い制度について
相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分について、相続人単独で金融機関に払い戻しの請求をすることができる。
ただし、同一金融機関に対して150万円を上限とする。
払い戻しを受けた預貯金については、当該相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされる。
最初は、葬式代のために事前にまとまった金額を出金する人が多いが、仮払い制度を利用すれば、葬式代に立替がほぼ不要になる、と考えていたけど、遺産のなかに利用しにくい不動産が多いようなときに、場合によっては、仮払い制度を利用することで、抜け駆け的に勝手に預貯金を引き出すことができてしまう。
遺言執行者がいた場合、執行者は仮払いをとめなくてはならないので、急いで金融機関に通知をしておかないと大変なことになりそう。
前回の他の相続法改正の研修では、いわゆる「相続させる」遺言について、もしかしたら遺言執行者でもできるかもしれない(要検討)、という話だったが、相続人が単独で登記申請できる以上、遺言執行者は登記手続きする権利も義務も有しない、ということで、実質現行法と同じようだ。
相続人以外の特別寄与者について
被相続人の相続人でない親族が、無償で療養看護等の労務提供して被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をした場合、相続の開始後、相続人に対して特別寄与料として金銭を請求できる。
直感的に、これは正直モメそうだ、と個人的に思う。
「無償で」というところで、あらかじめ解決しておくことで、無用の争いを防ぐことができるかもしれない。
被相続人が、生前贈与や遺言書で労務提供に報いるよう、感謝の気持ちとして金銭を渡すことができるようにしておくことで、「無償」の要件を満たすことができず、特別寄与料の問題にはならないと思われる。