時々、おじいちゃんがボケてきたから今のうちに自宅の名義を私の名前に変えておきたい、という相談を受けます。
ここで最低限考えなくてはならないのは、
1. 生前に名義を変える必要があるか
2. 名義を変えるために、おじいちゃんがOKするか
3. おじいちゃんは、判断能力があるか
ということです。
生前に名義を変える必要性について、よく、相続で変えると面倒だ、とか、書類や印鑑がたくさん必要で煩雑だ、ということを理由にする方が多いです。
でも、名義を変えるためには、贈与(ただであげる)や売買等の契約をする必要があり、契約書を作成したり、贈与税や譲渡所得税等の税務申告をしたりしなければならず、また、税金や売買代金等のお金を準備する必要があります。
このようなことを説明すると、
いやいや、そんな大げさなものではなくて、名義だけ変えてくれれば良い
とお答えになる方もみえますが、金銭等の対価がなく名義を変えれば、それは贈与になります。
手間を考えたときに、どちらが煩雑か、というのは一概に答えはでません。
先祖代々のこの土地だけはどうしても〇〇家で受け継いでいきたいのに、相続の際に簡単に話がまとまらない可能性がある、等というお金や手間以外の問題があるようでしたら、生前に手続きを進めるだけのメリットもあるのかなあ、と思いますが、何となく、という理由でしたら、費用や手間、代替手段等の説明をして、もう一度考えてみてください、とお伝えします。
名義を変えるためには所有者がOKするのは大前提です。
良かれと思ってでしょうが、時々先走ってしまう方もみえますが、司法書士は所有者の本人確認と意思確認を必ず行います。
確認に行ってみたら、そんな話は知らない、と言われてしまうとおじいちゃんも相談者も司法書士も時間を浪費してしまいます。
名義を変更するのであれば、事前に話し合って意思統一してからにされた方がよろしいかと思います。
また、所有者の本人確認や意思確認をしたときに、認知症等の疑いがある場合、私は医師の診断を受けてもらうようお勧めしています。
基本的に認知症の診断が出た場合は、判断能力が落ちていることが多く、医師が「大丈夫」と書面等で証明してくれない限り、当事務所では原則として依頼をお断りしております。
仮に認知症で判断能力がなかった場合、その売買や贈与等は無効です。
無効な行為を原因とする名義変更はできませんし、後日の紛争の種となりますので、名義変更を考え直すことをお勧めします。